2025/04/25 09:40
読んだもの
『兄の終い』 村井理子
「一刻もはやく、兄を持ち運べるサイズにしてしまおう。」という帯の文言。
突然自分の前にそびえたった問題を、目に見える、把握できる、両手に持てるサイズに。一刻もはやく。
その気持ち、突然の介護開始から1年で実家仕舞いをした自分と重なる部分がある、きっと。
そう思って手に取った1冊で、これがこの2年、まともに本が読めなかったわたしの久々の読書体験になりました。
これを読んだ夫は、筆者の兄がどんな人物だったのかが気になって仕方ないようだったけど、わたしはそれよりもとにかく、「5日間でこれを…」という主人公の切迫感や、疎遠だった親族との会話や、日常の手触りがぐるりと変わる感じや妙な高揚感や、そんなあれやこれやに自分の感覚として覚えがあるため、かなりハラハラして読んでました。
奈落にごみを投げる場面がよかった。
大声で叫びながら暗闇に投げ捨てる。まるで儀式で、祭りだ。
この場面が描かれている挿絵もすごく好き。躍動感。
映画になるってきいたけど、なるほどなあ。
奈落のとこ、いい場面になるといいですね…。
・・・・・・・
『本なら売るほど』 児島青
ネットで1話無料公開分を読んで気になっていたら、あれよという間に話題作になっていて、空港の小ぶりな書店でも平積みでした。
とある古本屋での出来事が綴られていきます。
1話ずつで完結していくので読みやすい…のですが、その1話ごとの完成度がすごい…。
作者さん、いままでどこにいらしたんですか! 好きです!! と拳を握りしめて足をじたばたさせながら読んでました。
漫画を読んでいて、巻末で目頭熱くため息をついてまた最初からページをめくる、という読み方をしたのは初めてな気がします。
鮮やかな1冊。1巻目だけでも大満足。
と思っていたら先日2巻が出ました。これがまた。
読めば本が(漫画も!)読みたくなる漫画! 古本屋に行きたくなる…。
題材として出てくる書籍のセレクトが自分の水に合っているのも大きいです。
だって2巻の冒頭、男性のモノローグ、
「お 『百日紅』マンサンコミックスで全巻揃ってる」「坂田靖子……諸星大二郎…」
って!
辞典の話に出てくる男性のモデルも、あの人か!とツボに入ってしまって。たのしい…。
口当たりがよいので、さらっとドラマ化映画化などされてしまいそうな。いやいいんですけど。
個人的には、この世界はもう少しこの作者さんの漫画で楽しみたい気分です。